不動産には複数の人が共有して一つの土地や一戸建て、マンションなどを持つことができます。
これを共有名義(共同名義)といい、名義人ごとに「持ち分」と呼ばれる割合が決められています。
相続等によって数人の親族に分けられた場合などがあります。
今回はこの共有名義の不動産の売却方法と「持ち分」とは何かも併せてご説明します。
土地の持ち分
仮に100㎡の土地を二人の兄弟AとBが半分ずつ持ち分で所有している場合、それぞれに50㎡ずつ均等に所有しているというわけではありません。
「持ち分」とは物理的な面積ではなく、権利の事です。
この権利のことを『所有権』といい、AとBには『2分の1ずつ土地を所有する権利』があるという事です。
また「持ち分」は共有名義人の頭数で均等に割った割合になるわけではありません。
相続などで長男に2分の一、次男と3男に4分の1ずつといったように持ち分は均等とは限りません。
では、持ち分をたくさん持っている長男に売却する権利があるといとそうではありません。
3人が平等の権利をもっていますので1人でも反対意見があれば売却はできません。
共有名義の不動産を売却する
では共有名義の不動産をどのように売却するのかを説明します。
売却する方法は以下の3つです。
- 自分の持分だけを売却する
- 土地の分筆をして売却する
- 売却して得た代金を持分に応じて分ける
この3パターンを細かく説明していきます。
自分の持分だけを売却する方法
土地は一つでも権利が複数人に分かれている場合、自分の持ち分だけを第三者に売却することは可能です。
自分の権利を第三者に譲るだけで土地全体を勝手に売却してしまうわけではありませんので売却は可能という事です。
この場合、自分の持ち分だけを売却するので、他の共有者の同意は必要ありません。
売却の手続きも通常の売買契約と変わらないので、売買契約を結んでから代金の受け渡し、所有権の移転登記をするといった流れです。
しかし、実際は自由に使えない土地の持ち分を買ってくれる人は少なく、ほとんどの場合同じ共有名義者が買うことが多いです。
土地の分筆をして売却する
まず分筆とは、一つの土地を2つ以上に分ける事をいいます。
分筆された土地は、それぞれに所有権がある2つの土地になります。
共有名義の土地を分筆する場合、持ち分に応じた面積で分け合い単独の土地にしてしまうのが一般的です。
例えば、3人で一つの土地を共有していた場合、分筆で土地を3つに分け、それぞれ単独の個人名義にするなどです。
こうすることで共有名義ではなくなるため、自分の意思で第三者に土地を売却することが可能になります。
ここで一つ注意して頂きたいのが、分筆をしただけではまだ個人所有になっていないという事です。
以下で分筆の流れを説明します。
① 測量をして境界線の確定をする
分筆をすると一つの土地が二つ以上に分かれるため、どこからどこまでが自分の土地なのか境界線を確定する必要があります。
そのため土地家屋調査士が土地の面積を正確に測り、境界線を確定し杭を設置します。
また測量図も作成してもらわなければなりません。
② 分筆登記の申請
分筆登記を行うには共有名義人全員で行う必要があります。
分筆前は、まだ共有名義のままなので全員の同意が必要になります。
③ 所有権移転登記
分筆の登記が終わると、分筆後の土地は一つ一つまだ共有名義になっております。
そのためそれぞれの持ち分を交換して単独名義に変更しなければなりません。
ここでやっと個人名義の土地になりました。
売却して得た代金を持分に応じて分ける
上記の2パターンは、共有名義人の間で売却に賛成している人と、反対している人がいるパターンです。
もし仮に、共有名義人全員が売却に賛成していたとするともっと簡単になります。
しかし、共有名義の土地を売るには原則、共有名義人全員が立ち会って売買契約書に署名、実印にて押印、印鑑証明書、住民票、本人確認書類の提出が必要です。
共有名義人全員が揃えば問題はないが、中には遠方に住んでいる方やご高齢で立ち会えない、どうしても日程が合わないなど様々な理由が考えられます。
そんな時は誰か一人を代表にして、売買契約を進めてもらえるように委任状を用意する事もできます。
この委任状があれば万が一全員が集まれない状況であっても委任状の権限内で本人に代わって売買契約ができます。
委任状には決まったフォーマットはなく、次の内容が記載されていれば委任状として効力があります。
- 委任者の住所、氏名と受任者の住所、氏名、押印
- 委任者が受任者に委任する旨
- 受任者に委任する権限の範囲
- 土地の表示
権限の範囲とは、「一切の権限を委任する」や「売買契約の締結」「登記手続き」などといった特定の権限にする事も可能です。
土地の表示には所在地、地番、地目、地積など登記簿に記載されている情報をそのまま記載します。